国吉康雄(1889–1953)は、日本に生まれ、アメリカで画家としてのキャリアを築いた近代美術家です。20世紀前半のニューヨークを拠点に活動し、当時のアメリカを代表する画家の一人として高く評価されました。その成長と成功は、国吉自身の才能だけでなく、アメリカの美術教育機関、教師、支援者、仲間の芸術家、そして文化機関との関係によって支えられていました。
1929年、国吉はニューヨーク近代美術館の重要な展覧会「Nineteen Living Americans(19人の存命アメリカ人作家)」の出品作家に選ばれました。1944年にはカーネギー・インスティテュートの国際美術展で一等賞を受賞し、1948年にはホイットニー美術館で大規模な回顧展が開催されました。さらに1952年には、ヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ代表作家の一人に選出されました。
こうした高い評価を受けながらも、当時のアメリカの帰化制度における人種的制限により、国吉は人生の大半を米国て過ごしたにもかかわらず、米国市民権を取得することができませんでした。真珠湾攻撃後には「敵性外国人」に分類されましたが、戦時中は日本の軍国主義に公然と反対し、民主主義の理念を支持するとともに、反ファシズムの芸術的・社会的活動に参加しました。また、尊敬される教育者として後進を育て、後には視覚芸術家の職業的・経済的権利を守るアーティスツ・エクイティ協会の初代会長を務めました。
本講演では、伊藤駿・岡山大学特任助教が、国吉の芸術的な歩み、教育活動、政治的・社会的実践、そして芸術家団体における指導的役割について解説しました。国吉を単に「二つの国の間で引き裂かれた画家」として捉えるのではなく、当時の芸術・社会制度の中で国吉自身が行った具体的な選択と、後世における日米双方の解釈がその評価に与えた影響について考察しています。
国吉康雄のデジタル・ミュージアム人物記事はこちらからご覧いただけます。
本プログラムは、デジタル・ミュージアムのオンライン展示「忘れ得ぬニューヨーク物語:1940年代の日本人と日系アメリカ人」の企画・制作と関連して開催されました。本展示は、在ニューヨーク日本国総領事館、SMBCグローバル財団、およびUCLAアジア系アメリカ研究センターのアラタニC.A.R.E.助成プログラムからの支援を受けて制作されました。