ジミー・ツトム・ミリキタニ(Jimmy Tsutomu Mirikitani, 1920–2012)は、生涯の多くを各地で移動しながら、安住の地を求めて生きた。カリフォルニア州サクラメントに生まれ、広島で育ち、第二次世界大戦中には米国政府によって収容され、その後ニューヨークに定住したミリキタニは、移動や戦争、喪失の記憶を作品へと昇華させた。晩年には、かつてマンハッタンの路上で描き、販売していた作品を通して、その人生が全米の人々に知られるようになった。[1]

ミリキタニは1920年6月15日、サクラメントに生まれた。幼少期に家族とともに広島へ移り、そこで成長し、美術を学んだ。後年、彼は自らを「サクラメント生まれ、広島育ち」と表現している。日本画の技法を学び、米国が第二次世界大戦に参戦する直前の1940年頃、再びアメリカへ渡った。[2]

真珠湾攻撃後、西海岸に暮らす日系人が強制的に立ち退かされるなか、ミリキタニは北カリフォルニアのツールレイク収容所に収容された。収容所でも、彼は絵を描き続けた。戦時中に実施され、日系人社会に大きな分断をもたらした、いわゆる「忠誠登録」の過程で、ミリキタニは抗議の意思を示すため米国市民権を放棄した。彼の拘束は終戦とともには終わらず、その後テキサス州クリスタルシティの司法省収容所に収容され、1946年にはニュージャージー州のシーブルック・ファームズへ移された。ここでは多くの日系人が冷凍食品加工業に従事していた。ミリキタニが解放されたのは1947年のことである。[3]

戦争は、日本にいたミリキタニの家族や知人にも大きな犠牲をもたらした。広島への原子爆弾投下によって、家族や親しい人々が命を失った。広島とツールレイクの記憶は、その後も彼の作品に繰り返し現れる重要な主題となった。同時に、鮮やかな色彩で描かれた猫や花、魚、風景など、自らの人生に根ざしたさまざまなモチーフも作品に登場する。[4]

1950年代初頭、ミリキタニは生活を立て直し、芸術活動を続けることを願ってニューヨークへ移った。伝記資料によれば、コロンビア大学の図書館で寝泊まりしていたところをある美術教授が見かけたことをきっかけに、ニューヨーク仏教会(New York Buddhist Church)を紹介されたという。同会の支援を受け、料理人としての技術を身につけたミリキタニは、その後、東海岸各地のレストランやリゾート、サマーキャンプ、カントリークラブなどで働いた。戦時下の収容という特殊な状況のもとで米国市民権を放棄した日系人を救済する法的な取り組みにより、ミリキタニの市民権は1959年に回復された。しかし、本人は当時、その事実を知らされていなかったとされる。[5]

その後、ミリキタニはパーク・アベニューの家庭で住み込みの料理人として働いた時期もあった。しかし1980年代に雇用主が亡くなると、再び安定した仕事と住居を失った。やがてグリニッジ・ヴィレッジやロウアー・マンハッタンの路上で暮らし、自らの作品を制作・販売することで生活を支えた。手に入る材料を用いて制作された鮮やかなドローイングやコラージュには、広島、ツールレイク、そして代表的なモチーフとなった猫など、彼の人生を形づくった記憶が繰り返し描かれている。[6]

2001年1月、映画監督リンダ・ハッテンドーフ(Linda Hattendorf)は、ソーホーでミリキタニと出会い、彼のドローイングを一枚購入した。それをきっかけに、ハッテンドーフはミリキタニを撮影し、作品に刻まれた彼の過去を知るようになった。当初はニューヨークの路上で制作を続ける高齢の芸術家を記録する試みだったが、やがてそれは、戦争、収容、ホームレス生活、そしてそれらを生き抜いたミリキタニの人生をたどる記録となっていった。[7]

そして、2001年9月11日を迎える。

世界貿易センタービルへの攻撃後、ロウアー・マンハッタンは煙と粉塵に覆われた。当時81歳だったミリキタニは、なおも路上で生活し、汚染された空気のなかで咳き込んでいた。ハッテンドーフは彼を見つけると、近くにあった自宅アパートへ招き入れた。この一時的な避難が、ミリキタニの人生を大きく変えることになる。その後ハッテンドーフは、彼が社会福祉制度を利用し、給付や住居を得るための手続きを支援した。2002年、ミリキタニはヴィレッジ・ケア・オブ・ニューヨーク(Village Care of New York)が運営する高齢者向け住宅へ入居した。[8]

9月11日の出来事はまた、ミリキタニの過去の経験に思いがけない同時代的な意味をもたらした。第二次世界大戦中、日本人の祖先を持つことを理由に自由を奪われた米国市民が、半世紀以上を経て再び、戦争、恐怖、安全保障、そして「誰がこの社会に属するのか」という問題が日常生活に入り込む時代を生きることになったのである。ハッテンドーフが制作したドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫』(The Cats of Mirikitani, 2006)は、映画監督と芸術家の間に育まれた友情を追いながら、こうした異なる時代の歴史を結びつけた。[9]

同作によって、ミリキタニとその作品は広く知られるようになった。映画は2006年、ニューヨークのトライベッカ映画祭で初上映され、その後PBSを通じて全米で放送された。ミリキタニの作品も各地で紹介され、スミソニアン・アメリカ美術館レンウィック・ギャラリーで開催された展覧会『The Art of Gaman: Arts and Crafts from the Japanese American Internment Camps, 1942–1946』にも出品された。[10]

ミリキタニは2012年10月21日、92歳で亡くなるまでニューヨークで暮らした。その生涯には、しばしば別々の歴史として語られるいくつもの出来事が交差している。日本人移民と太平洋をまたぐアイデンティティ、戦時下の日系人収容、広島、戦後の日系アメリカ人の再定住、ニューヨークにおけるホームレス生活、そして9月11日。同地で人生の最後の数十年を過ごしたミリキタニは、自らのドローイングを通して、これらの歴史をニューヨークという都市の記憶の一部として残した。

Notes

  1. Smithsonian American Art Museum, “Jimmy Tsutomu Mirikitani”; Densho Encyclopedia, “Jimmy Mirikitani.”
  2. Spencer Museum of Art, Street Nihonga: The Art of Jimmy Tsutomu Mirikitani and “Mapping the Life of Jimmy Mirikitani”; Smithsonian American Art Museum, “Jimmy Tsutomu Mirikitani.”
  3. Densho Encyclopedia, “Jimmy Mirikitani”; Smithsonian National Museum of American History, collection record for Jimmy Mirikitani’s drawing of Tule Lake.
  4. PBS Independent Lens, The Cats of Mirikitani; Spencer Museum of Art, Street Nihonga: The Art of Jimmy Tsutomu Mirikitani.
  5. Densho Encyclopedia, “Jimmy Mirikitani”; Discover Nikkei, “‘Living Treasures’ of New York – Jimmy Mirikitani (1920–2012).”
  6. Smithsonian American Art Museum, “Jimmy Tsutomu Mirikitani”; Densho Encyclopedia, “Jimmy Mirikitani.”
  7. PBS Independent Lens, The Cats of Mirikitani; Linda Hattendorf, The Cats of Mirikitani, official film website.
  8. PBS Independent Lens, The Cats of Mirikitani; Linda Hattendorf, The Cats of Mirikitani, official film website.
  9. PBS Independent Lens, The Cats of Mirikitani.
  10. Smithsonian American Art Museum, “Jimmy Tsutomu Mirikitani”; PBS Independent Lens, The Cats of Mirikitani.

 

参考文献

Densho Encyclopedia. “Jimmy Mirikitani.” Densho.

Discover Nikkei. “‘Living Treasures’ of New York – Jimmy Mirikitani (1920–2012).” Japanese American National Museum.

Hattendorf, Linda, dir. The Cats of Mirikitani. 2006.

PBS Independent Lens. The Cats of Mirikitani. Premiered May 8, 2007.

Smithsonian American Art Museum. “Jimmy Tsutomu Mirikitani.”

Smithsonian National Museum of American History. “Drawing,” Jimmy Mirikitani, pencil sketch of Tule Lake.

Spencer Museum of Art, University of Kansas. Street Nihonga: The Art of Jimmy Tsutomu Mirikitani. 2026.

Spencer Museum of Art, University of Kansas. “Mapping the Life of Jimmy Mirikitani.” Street Nihonga virtual exhibition.

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