古田土雅堂(古田土貞治)(1880-1954)

古田土雅堂、本名・貞治は、20世紀初頭のアメリカで活動した画家、陶磁器デザイナーである。なかでも、高峰譲吉博士がニューヨーク州フォレストバーグに所有した別荘「松楓殿」の室内装飾は、雅堂の渡米後の活動を示す重要な仕事である。

雅堂は1880年、栃木県芳賀郡中川村、現在の茂木町に生まれた。東京美術学校、現在の東京藝術大学の記録によれば、1897年に予備課程へ入学し、1902年7月に日本画科を卒業した。1906年に渡米し、当初はシカゴで働きながら美術を学んだ後、ニューヨーク州へ移った。

渡米後まもなく、雅堂は松楓殿の室内装飾に携わった。松楓殿は、1904年のセントルイス万国博覧会のために建設された京都風の建築で、博覧会終了後、高峰譲吉がニューヨーク州フォレストバーグのメリーウォルド・パークに所有していた別荘地へ移築された。

雅堂の仕事の全容は、高岡市立博物館が2022年に紹介した資料と、2024年にふみの森もてぎで開催された企画展「古田土雅堂と高峰博士 松楓殿天井画とアメリカへの道」によって、より明確になった。それまで作者不詳とされていた松楓殿食堂の天井画全35点が、雅堂の作品であることが判明したのである。

その根拠となったのは、雅堂の遺族が保管していた制作中の写真と、1907年に作成された履歴書である。履歴書には、1906年に「高峰博士別荘」の室内装飾に従事し、当時も制作を続けていたことが記されている。また、1906年9月にメリーウォルド・パークの雅堂宛てに送られた書簡も、雅堂が松楓殿に滞在しながら仕事をしていたことを裏付けている。

現存する食堂天井画には、ハト、ニワトリ、キジ、ハクチョウ、エビ、ブドウなど、動植物を題材とした親しみやすい図柄が描かれている。支持体にはキャンバスが用いられているが、日本画科で学んだ雅堂らしく墨も使用されている。日本画の技法と、食堂という空間に適した軽やかで装飾的な表現が組み合わされた作品である。

雅堂の仕事は、京都出身の画家・デザイナーである牧野克次の仕事と区別して整理する必要がある。雅堂は主として1906年から1907年に松楓殿の食堂装飾と天井画を手がけた。一方、牧野はその後、松楓殿の主賓室「松楓の間」を中心に絵画や室内装飾の図案を制作しており、1909年の落款がある作品も現存する。松楓殿の室内は、複数の日本人画家、デザイナー、職人が、数年にわたって携わることによって形成されたと考えられる。

雅堂は1907年2月、ニューヨークの森村ブラザースに入社した。日本で製造され、アメリカやヨーロッパに輸出される陶磁器の絵付け図案を制作し、1910年には社命によりイギリス、ドイツ、フランスを視察した。森村ブラザースでの仕事は生活の基盤となると同時に、雅堂が画家として独自の制作を続けることを可能にした。

雅堂は、ニューヨークの日本人およびアメリカ人美術家の活動にも積極的に参加した。1917年と1918年の紐育日本美術協会展、1919年から1924年の独立美術家協会展、1922年と1923年のサロンズ・オブ・アメリカ、1922年の画彫会展などに出品した。また、1920年にニューヨークで日本人画会が結成された際には、発起人の一人となった。交通、地下鉄の混雑、家庭の室内、ニューヨークの日常生活など、近代都市を題材とした作品も制作している。

1924年4月9日付の『紐育新報』は、雅堂が東京美術学校校長・正木直彦から高峰譲吉への紹介状を携えて渡米し、高峰の別荘装飾に従事した後、高峰の紹介によって森村ブラザースに入社したと伝えている。高岡市立博物館およびふみの森もてぎが紹介した履歴書、制作中の写真、書簡は、この当時の記事の記述を具体的に裏付ける資料となっている。

雅堂は1924年に帰国した。前年の関東大震災によって日本では木材の調達が困難になっていると聞き、アメリカから組立式住宅を持ち帰って宇都宮に建設した。この住宅は後に茂木町へ移築され、地域の文化財として保存されている。雅堂は1954年、宇都宮の自宅で死去した。

松楓殿における雅堂の仕事が明らかになったことにより、その渡米後の活動について新たな理解が可能となった。雅堂は、近代都市ニューヨークを描いた画家であり、森村ブラザースの陶磁器デザイナーであっただけではない。20世紀初頭のニューヨーク州に生まれた、日米文化交流を象徴する重要な日本建築の室内制作にも直接参加していたのである。

参考文献

  • ふみの森もてぎ「古田土雅堂と高峰博士 松楓殿天井画とアメリカへの道」2024年10月5日–12月15日。
  • 高岡市立博物館『没後100年 高峰譲吉記念展』出品目録、2022年。
  • 京都工芸繊維大学美術工芸資料館「牧野克次と霜鳥之彦 洋画家の多彩な顔」2022年。
  • 栃木県立美術館「古田土雅堂」作家情報。
  • 東京藝術大学近現代美術史・大学史研究センター「東京美術学校在籍者一覧(明治期入学者)」。
  • 『紐育新報』1924年4月9日。
  • 佐藤麻衣『ニューヨークの日本人画家たち 戦前期における芸術活動の足跡』六花出版、2021年。
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