日系アメリカ人市民同盟(Japanese American Citizens League、JACL)ニューヨーク支部は、1944年に設立され、アル・フナバシ(Al Funabashi)が初代支部長を務めた。JACLは、日系アメリカ人の権利と市民としての地位を擁護することを目的として、反日的な差別が広く存在していた1929年から1930年にかけて西海岸で設立された全国組織である。初期の活動では、アメリカ市民としての意識、市民社会への参加、国家への忠誠が重視された。一方、第二次世界大戦中、JACLの全国組織は、日系アメリカ人の強制立ち退きと強制収容を進める連邦政府に協力するという、後に大きな議論を呼ぶ方針をとった。またJACLは、収容所を離れ、西海岸以外の地域へ再定住する日系アメリカ人を支援する活動にも関わった。1943年にはニューヨークにJACLの地域事務所が開設され、翌1944年にニューヨーク支部が設立された。
JACLが活動を展開した背景には、日本人移民の権利を制限してきた長い法制度の歴史があった。1913年にカリフォルニア州で制定された外国人土地法(Alien Land Law)は、日本人移民を含む「市民権取得資格のない外国人」による農地の所有を禁止し、土地の賃借にも制限を設けた。同様の法律は、その後、西部の他州でも制定された。1924年移民法(Immigration Act of 1924、ジョンソン=リード法)は、アメリカ市民権を取得する資格がないとされた移民の入国を排除することにより、日本からアメリカへの移民を事実上停止した。
1952年移民国籍法(Immigration and Nationality Act of 1952、通称マッカラン=ウォルター法)は、帰化資格における人種による制限を撤廃し、日本にも移民割当枠を設けた。これにより、人種を理由に長年帰化を認められてこなかった一世も、アメリカ市民権を取得できるようになった。これを受け、JACLニューヨーク支部は、帰化を希望する一世を対象に、日本人メソジスト教会で市民権取得のための講習会を開催した。
JACLニューヨーク支部は、市民権や公民権に関わる活動、地域社会でのさまざまな取り組みにも参加した。1960年代後半には、第二次世界大戦以前から戦時中にかけて日本人および日系アメリカ人に対して広く使われていた差別的な呼称を使用しないよう、ニューヨークのメディアに働きかけた。ショウスケ・ササキ(Shosuke Sasaki)は、メディアによるこの言葉の使用をやめさせる活動に取り組んだ。ファッションデザイナーの高田賢三が自身の宣伝にこの言葉を使用した際には、ジョージ・ユザワ(George Yuzawa)をはじめとするコミュニティの人々がその使用に抗議した。また別の運動では、スキ・テラダ・ポーツ(Suki Terada Ports)が、JACL会員、その他の日系アメリカ人、さらにさまざまな人種的背景をもつ支援者とともに、ボンウィット・テラー(Bonwit Teller)の店舗前で、同じ差別語をブティック名に使用したことに抗議する多世代によるピケに参加した。その後、この名称を掲げた看板は撤去された。
その後、JACLニューヨーク支部は、第二次世界大戦中に強制収容された日系アメリカ人に対する補償と公式謝罪を求めるJACL全国組織のリドレス運動を支持し、「戦時民間人転住・収容に関する委員会」(Commission on Wartime Relocation and Internment of Civilians、CWRIC)の公聴会に関連する活動にも参加した。また、ニューヨークの日系コミュニティの諸団体を支援するとともに、教育・文化活動にも取り組んだ。
地域での活動には、高校卒業生を対象とした奨学金制度もあり、ルシル・ナカムラ奨学金(Lucille Nakamura Scholarship Award)は、他者や地域社会への奉仕活動で優れた実績をあげた生徒を顕彰した。また、日系アメリカ人の作家を対象とするルビー・ヨシノ・シャー劇作家賞(Ruby Yoshino Schaar Playwright Award)も設けられた。この賞は、ソプラノ歌手、音楽教師、JACLニューヨーク支部の長年の支部長として活動し、ニューヨークで人種や民族の枠を越えて公民権のために尽力したルビー・ヨシノ・シャーを記念したものである。
参考文献
Densho Encyclopedia, “Japanese American Citizens League.”
Densho Encyclopedia, “Resettlement in New York.”
Densho Encyclopedia, “Immigration Act of 1924.”
Densho Encyclopedia, “Immigration and Nationality Act of 1952.”
Japanese American Association of New York, History of the Japanese and Japanese Americans in New York, 1900–2001