『The Silent Witness(静かなる証人):広島の生存者の物語』 モリモト・トミコ・ウエスト

トミコ・モリモト・ウエストは1932年に広島で生まれ、1945年8月6日、原子爆弾が故郷に投下されたとき、13歳だった。爆心地から約3キロに位置する軍需工場で働いており、眩い白い閃光を見たあと、音もなく床に投げ出されたと語る。建物の壁が爆風を直接受けるのを防いだが、周囲の構造は崩壊した。

その後数日間、彼女は壊滅した街をさまよいながら家族を探した。最終的に祖父の遺体を見つけ、集めた薪を使って自ら火葬した。破壊のなかでも尊厳を保とうとする意思による行動だった。両親と弟妹は生存していたが、彼女は原爆投下直後の惨状を目の当たりにした。その証言は、抑えた語り口の中に深い喪失と耐えがたい記憶を抱えた個人の経験を伝えている。

戦後、トミコは渡米し、最終的にニューヨークに定住した。長らく自らの体験を公にすることはなかったが、次第に、被爆者として語ることが自らの使命であると感じるようになった。自身が生き抜いた悲劇が、二度と繰り返されないよう願ってのことだった。

2000年代初頭以降、トミコはニューヨークで毎年行われている広島・長崎平和記念行事において中心的な存在となり、毎年基調講演を務めてきた。これらの行事は、広島県人会、長崎県人会(バッテン会)、ニューヨーク平和・和解財団によって主催され、世代や信仰を超えた人々が記憶を共有し、平和を祈る場となっている。トミコの静かで率直な語りは、これらの追悼行事の中で特に大切にされてきた。

2022年、彼女の体験は、クンハルト・フィルム財団が制作した18分のドキュメンタリー『The Silent Witness』に取り上げられた。ジョージ・クンハルトとテディ・クンハルトが監督を務め、Life Storiesシリーズの一環として制作されたこの作品は、彼女の被爆体験と広島への帰郷、そしてその記憶と向き合う姿を記録している。現在も全米の教育機関や地域社会で活用されている。

また、ニューヨークの広島記念式典で語った彼女のメッセージ映像が、ジュン・スエナガのYouTubeチャンネルでも公開されている。地域社会における追悼活動における彼女の姿を記録したもの。
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現在90代のトミコはニューヨークに暮らし、甥の支えを受けている。自身の体験を公の場で語ることを選んだのは、あの悲劇を二度と繰り返させたくないという思いからだった。その声は、静かでありながらも、共感と記憶、そして平和への行動を促す力を持っている。

出典
提供:Life Stories
映像作品:The Silent Witness: A Survivor’s Story of Hiroshima
詳細:https://www.lifestories.org/films-series/the-silent-witness

Subject:
森本トミコ・ウェスト
Year:
1932
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