古本タク: 平和活動家、コミュニティリーダー、ニューヨーク広島県人会創設メンバー

古本タクは、広島・長崎の原爆の記憶を継承し、平和を訴え、ニューヨークおよびニュージャージーにおける日系アメリカ人コミュニティを支えるために、人生を捧げてきた人物である。彼はニューヨーク広島県人会の創設メンバーの一人として、三州地域に暮らす広島出身者やその子孫を結ぶ活動に尽力してきた。

第二次世界大戦中の1944年、カリフォルニア州トゥーリーレイク強制収容所にて生まれ、幼少期を広島で過ごした。祖父母や同級生が被爆者であり、原爆の記憶は彼の人格形成に深く関わっている。1956年に米国へ戻り、その後ベトナム戦争において陸軍情報将校として従軍。1971年にはブロンズスター勲章を受章した。帰国後はPTSDに苦しみながらも、その経験を社会正義、地域社会との連携、異文化理解への生涯の取り組みへと昇華させている。

毎年8月に開催されるニューヨークの広島・長崎平和記念行事の中心的な存在としても知られる。長崎県人会(バッテン会)やニューヨーク平和・和解財団と連携し、多様な信仰や世代の参加者を集め、被爆者の証言を共有する場を築いてきた。学校や大学、市民団体などでも被爆証言の橋渡しを行い、記憶の継承と可視化に尽力している。

この活動に加え、**古本の人生を描いたドキュメンタリー『Raised in Hiroshima, Fought in Vietnam』**が2025年3月にNHK WORLDにて放送された(監督:中村真夕)。戦中の広島での幼少期から、アメリカでの生活、そしてベトナム戦争への従軍までをたどり、記憶、和解、癒しといったテーマに迫る内容となっている。本作はニューヨークでも大きな反響を呼び、彼の歩みと功績への注目が集まった。

また、ニューヨーク日系人会(JAANY)やラトガーズ大学オーラル・ヒストリー・アーカイブ、地域密着型のストーリーテリング・プロジェクトを通じて、日系アメリカ人の歴史保存にも貢献。研究者、教育者、若い活動家たちのために、インタビューや資料提供、ネットワーク構築など幅広い支援を行っている。

1974年より妻キャロリンと共に不動産業Furumoto Realtyを経営する傍ら、ニュージャージー州AAPI諮問委員会の一員としても活躍し、コレマツの日制定にも尽力した。

現在70代後半を迎えるが、地域と平和への関与は衰えることがない。原爆の記憶、文化の対話、未来への希望をつなぐ存在として、古本タクの活動は今も続いている。

出典

Subject:
Tak Furumoto
Year:
1944
Media Type: