ミッチー・タケウチ と 鶴澤セツコ:世代を超えた証言と平和への誓い

ミチエ・タケウチは、ニューヨークを拠点に活動する日本出身の映像作家、ライター、社会活動家。広島で被爆した医師を父に持ち、東京とアメリカの両方で教育を受けた。父は被爆後、医療の道に進み、人々の癒やしに尽くした。ミチエ自身も、被爆二世として家族に受け継がれた記憶を抱え、その体験を平和へのメッセージへと昇華させる作品を発表してきた。

2020年、ミチエは長編ドキュメンタリー映画『The Vow from Hiroshima』を発表した。本作は、世界的に知られる被爆者スツコ・スルロウの人生と証言に焦点を当てたものであり、ミチエは脚本とプロデュースを手がけた。彼女の個人的な背景とスルロウとの友情をもとに、被爆の記憶を次世代へと受け継ぐ、親密で世代を超えた物語が紡がれている。

映画では、広島で13歳のときに被爆したスルロウが、核廃絶を訴える国際的な活動家となる過程が描かれている。彼女は国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の創設メンバーとして活動し、2017年に同団体がノーベル平和賞を受賞した際には、代表としてオスロでスピーチを行い、世界中に被爆者の声を届けた。

ミチエは、語り手としても本作に登場し、被爆二世としての視点から物語を紡ぐ。被爆の直接的な記憶を持たない世代でありながら、家族を通じて継承された痛みと責任を引き受ける姿勢が描かれている。ミチエの語りを通して、スルロウの証言は若い世代や世界各地の観客に届き、新たな共感と行動を生んでいる。

スツコ・スルロウは現在カナダを拠点としているが、その活動はニューヨークをはじめ世界各地に広がっている。国連での発言や国際ネットワークとの協働を通じて、1945年の広島で起こった現実を、時代と国境を越えて伝えてきた。その言葉は、外交官、学生、市民活動家、政策立案者に深い影響を与えている。

ミチエ・タケウチは現在もニューヨークに在住し、教育活動、宗教間対話、そして核問題と戦後史に関するストーリーテリングに取り組んでいる。スルロウとの協働は、家族の記憶と国際的責任に根ざした、世代を超えた証言のあり方を示している。

二人の活動は、核戦争の悲劇を記憶すると同時に、未来への希望と平和への意志を呼びかけている。

出典:

『ヒロシマへの誓い』(The Vow from Hiroshima)
監督:ミッチー・タケウチ、2019年
https://thevowfromhiroshima.com/
https://icanw.org/setsuko_thurlow

Subject:
Mitchie Takeuchi and Setsuko Thurlow
Year:
1932
THEME:
Media Type: