2000年代初頭より、ニューヨークを拠点とする日系および日本人団体である広島県人会、バッテン会(長崎県人会)、および平和と和解のためのニューヨーク財団は、毎年8月上旬に広島・長崎原爆の記憶を継承する追悼行事を共催してきた。これらのイベントは、犠牲者を追悼し、被爆者の証言を共有し、宗教や文化の垣根を超えた対話を通じて、平和・和解・核廃絶を訴えることを目的としている。
ニューヨーク広島県人会は、広島県出身者およびその子孫によって構成されており、この追悼行事の中心的な役割を担ってきた。被爆者の娘であり、ドキュメンタリー映画『The Vow from Hiroshima』のプロデューサーでもあるミチエ・タケウチの指導の下、同会は被爆者の声に耳を傾ける機会を社会に届け、若い世代への教育にも力を入れている。例えば、森本・トミコ・ウエストのような被爆者による証言が共有される場が設けられ、映画上映や教育プログラムを通じて、原爆の人的被害を知らない人々にも深い理解を促している。
これに加えて、**長崎にゆかりのあるニューヨーカーで構成されるバッテン会(長崎県人会)は、長崎の被爆体験と記憶が見過ごされることのないよう、その継承に尽力している。規模こそ大きくないものの、毎年8月9日(長崎原爆の日)**には追悼の朗読、音楽献呈、儀式的な祈りなどを通じて、積極的に平和イベントに貢献している。
両県人会は、浄土真宗の僧侶であり長年にわたる平和運動家でもある中垣顕實(けんじつ)師が代表を務める平和と和解のためのニューヨーク財団と密接に連携している。中垣師は1990年代から広島・長崎の宗教間追悼式をニューヨークで主催しており、2018年に財団を設立して以降、こうした行事をより包括的かつ感動的なものへと発展させてきた。式典はリバーサイド教会、ジャパン・ソサエティ、地元の仏教寺院などで開催され、仏教の読経、キリスト教やユダヤ教の祈り、イスラム教の朗読、平和の音楽、折り鶴の献納、灯籠流しなどが取り入れられている。
これらの行事は、単なる追悼にとどまらず、教育と地域づくりの一環としても位置づけられている。被爆者やその家族による証言、核廃絶に関するプレゼンテーション、ドキュメンタリー上映、世代を超えたワークショップなどが例年実施されている。
広島県人会、バッテン会、平和財団によるこの協働は、実体験に根ざした平和活動の場を持続的に支えてきた。彼らの連携は、記憶が単なる追悼にとどまらず、未来への行動を促す力であることを体現している。宗教や文化を超えた理解と連帯を育むことにより、広島と長崎の遺産がより平和で公正な社会の実現に貢献し続けることを目指している。
参考リンク:
The Vow from Hiroshima: https://thevowfromhiroshima.com
広島県人会(Facebook): https://www.facebook.com/groups/HiroshimaNewyork
バッテン会(長崎県人会・公式サイト): https://www.battenkai.com/
平和と和解のためのニューヨーク財団: https://heiwafoundation.org
第31回 宗教間ヒロシマ・ナガサキ追悼式(2024年): https://www.youtube.com/watch?v=S2ITH8Hny8I